ヤスヒロ精肉店


dsc8314

広見小学校と広見公園のちょうど真ん中あたりに位置する「ヤスヒロ精肉店」。こちらで扱う精肉は国産のみ。ショーケースのなかには、LYB豚のような銘柄肉も並ぶ。
平日と土祝は朝9時、日曜は10時に開店し、その直後から客足が途絶えることはない。こちらは、この町に暮らす人々の三度三度の食卓を支える、いわゆる“町のお肉屋さん”だ。

_dsc8280

「ヤスヒロ精肉店」が開業したのは、今から40年ほど前のこと。当初は、焼肉屋さんを併設する精肉店として商店街に店を構えていた。現在の場所に移転して15〜16年が経つという。
山口宏さんは、この店の若き店主。十代の頃は家業を継ぐ気がなく一度は一般企業に就職したけれど、その後熟考し、父の後を継ぐことに決めた。この店を切り盛りするようになって2年になる。

“手作りハム”がお店の人気商品のひとつだ。ロースハムをはじめとした国産のロース肉を使ったハムは数種類。このほかに、手作りソーセージやベーコンなども店頭に並ぶ。そのすべてを山口さんがひとりで作っているという。

塩水で1か月かけて漬け込んだ国産ロース肉を1つずつ真水で洗うところから、この日のハム作りは始まった
ローハムは少なくとも月1回は仕込むという。
塩水に漬け込んだブロック肉を1つずつていねいに水で洗い、1つずつ白い布で包む。

体重をかけ、隙間なく包んでいく。力のいる大変な作業だ
体重をかけ、隙間なく包んでいく。力のいる大変な作業だ

包み終わると今度は、キャンディのように端をキュッと紐で結び、その後、締め上げるように紐を引っ張りながらグルグルと巻いていく。

力一杯締め上げるため、指が切れないよう、右手にだけ軍手をはめる
力一杯締め上げるため、指が切れないよう、右手にだけ軍手をはめる
今回仕込んだ肉の重量はおよそ30kg。肉の塊がどんどん積み上げられていく
今回仕込んだ肉の重量はおよそ30kg。肉の塊がどんどん積み上げられていく
白い布でくるんだロース肉をスモーク室へ
白い布でくるんだロース肉をスモーク室へ
桜のチップで1時間ほどかけてスモークする
桜のチップで1時間ほどかけてスモークする

1時間かけてスモークしたら、翌日、ボイルする。食品衛生法で、ハムの中心部の温度を63℃で30分以上加熱することが定められているので、その基準を守り、温度を確認しながらボイルする。こうして多くの手間と時間をかけて手作りハムは作られている。

山口さんがハム作りに精を出すようになったのは9年ほど前のこと。ハムの製造販売には、食肉製品製造業の許可のほか、食品衛生管理者の資格が必要だ。また、製造室の設置等、設備についてもさまざまな基準が設けられており、それらをクリアしていないと手作りハムの製造・販売ができないのだ。

100g377円で販売している
100g377円で販売している

家業を継ぐことを決めた山口さんは、まず、1か月半かけて東京へ通い食品衛生管理者の資格を取得した。
その直後、勤務していたハム職人が辞めることに。山口さんは、たった1か月の間に、ハム作りのすべてを習得しなければならなくなってしまった。
「実際に1人で作るようになると、2人で作っていたときのように上手く行かなくて。悩みましたね」
特にスモークの工程が上手く行かない。
「白さがウリのホワイトハムがブラックハムになっちゃってさ(笑)」
上手く作れるようになった今だからこそ、こんな風に失敗を笑いに変え、おもしろおかしく話すことができる。でも当時の苦悩は相当なものだったはずだ。

試行錯誤を繰り返すうちに、スモークの方法に問題があることが判明した。改善しコツを掴んでからは、安定して美味しいハムを作れるようになったという。そうなるまでに、半年かかった。
通常月に1〜2回、25〜30本ほどを仕込むところ、12月は4回、合計で100本ほど仕込むという。2015年の年の瀬には、その全てがあっという間に完売。店の大人気商品となった。お歳暮など年末年始のギフトに選ぶ人が増えているという。

_dsc8286

山口さんがf-Bizを訪れたのは、「富士きのこセンター」のきのっきー(ブログネーム)に誘われたことがきっかけだ。
最初は誘われるがまま、f-Bizがどういう存在なのかすら知らずに出かけて行ったそうだ。
行っていろいろ話を聞いて、中小企業支援のために行政がこういう取り組みをしていることを知る。それならばぜひ活用したい。そう考え、2回目に相談に訪れたときには、ブログの開設をサポートしてもらった。
毎日更新を目指したがなかなか難しく、せめて週1回は……と3〜4か月ほど続けたところで父親が倒れ、f-Bizに通う時間のゆとりはなくなった。
その1年半後、残念ながら父親は他界。その存在の大きさを知ると同時に、大きな支えを失ったことでこの先どうしたらいいのかわからなくなり、再びf-Bizを訪れた。
何から話せばいいのかわからない。そんな気持ちで小出宗昭センター長と雑談をしているなかで「富士山シリーズ」がスタートすることになった。
「手作り富士山ハムステーキ」や「手作り富士山ソーセージ」など、「ヤスヒロ精肉店」自慢の手作りハム・ソーセージが富士山のカタチをして再登場。すべて注文を受けてから揚げる出来立てアツアツが自慢の惣菜では、富士山のカタチをした「富士山ハムカツ」が人気だ。三角だから、子供にも食べやすいのがうれしい。

_dsc8269

店で自信を持って提供している素材を使って、1つ1つていねいに作る。これこそが手作りハム・ソーセージの美味しさの秘訣。安心して食べられることも、消費者にとってはさらに大きなメリットだ。
「『美味しい』と言われるのが、何よりもうれしい」と言う山口さん。日々の原動力は、この言葉と食べる人の笑顔。
今日もその笑顔を励みに、安心・安全で美味しいハム・ソーセージ作りに勤しむのだ。

ヤスヒロ精肉店

住所:富士市石坂459-12
TEL:0545-21-1168