Chestnuts


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サボテンや多肉植物を専門に扱うショップ「Chestnuts」のオーナーである栗田桃子さん。とはいえ、扱う植物の種類はとても多く、きっと長い間、専門的にこれらの植物と触れ合ってきたに違いないと思いながら話を聞いてみたら、意外や意外、植物に興味を持つようになったのは、わずか2年前(!)のことだという。

家を新築したとき、そのお祝いにお母さまから植物をプレゼントされた。その植物に合う鉢を探しているうちに、静岡市清水区にあるボタニカルショップにたどり着いた。
「見たことない植物がいっぱいで、花器もたくさんあって。そこで“火星人”に出会ったんです。『こんなのあるんだ! 見たことないし!』と思ったのが植物にハマるきっかけでした」

中央の黒い鉢に入っているのが<火星人>だ
中央の黒い鉢に入っているのが<火星人>だ

<火星人>別名“フォッケア エデュリス”。
ガガイモ科フォッケア属の塊根植物で、丸くて太い灰白色の塊根が特徴的。写真の火星人の塊根はまだ小さいけれど、大きく成長すると、大きて白いゴツゴツした塊根となる。この塊根からツル状の枝を伸ばしていき、薄い緑色の変わった花を咲かせるそうだ。
この<火星人>との出会いをきっかけに、栗田さんは“ちょっと変わった”植物にはまっていった。当時会社員だった栗田さんは、第二子の育児休暇の真っ只中。比較的時間があったもの手伝って、植物の数は急速に増えていったそうだ。家の中に置く場所がなくなれば梁に棒を渡して植物を吊るした。それもいっぱいになれば壁に棚を取りつけて、植物の居場所を確保していった。

栗田さんの前職は、輸入車ディーラーでの事務職。第一子を出産したときには、産後7か月で職場復帰を果たした。
「私の母が見てくれるというので、ありがたく思いながら復帰したんです。でも、どうやってトイレトレーニングをしたのか、お箸を持てるようになるためにどんな練習をしたのか、私はなーんにも知らないまま。どうやってできるようになったかを大きくなったとき説明できる自分でありたかった。一番いい時期を逃しちゃったなという気持ちを強く持っていました。だから、第二子の出産を機に、子供たちと一緒にいたいと強く思うようになりました」

1年間の育休期間の間に出会った“火星人”がきっかけで植物にハマった。
第二子妊娠中に建てた家には、栗田さんとご主人の共通の趣味であるバイク専用のガレージがある。もし植物のお店を始めるなら……借りればかかるテナント料も、このガレージで始めればかからない。
家で仕事をすれば、子供たちと一緒にいられる。成長を見逃すこともない。
“よし、自宅でお店をやろう!”そう決めたのは、2015年3月のことだった。

ガレージをそのままショップに。ここに置いていた2台のバイクは、現在、ご主人のご実家に預かってもらっているという
ガレージをそのままショップに。ここに置いていた2台のバイクは、現在、ご主人のご実家に預かってもらっているという

普段通っている美容室のオーナーに、お店をやりたいと話したことがきっかけでf-Bizの存在を知った。
「その道のプロが1回1時間、経営のことを無料で教えてくれるから行っておいでと言われたんです」
最初に電話をしたのは、2015年3月の終わり頃。
「そのとき電話に出てくださったのが、f-Biz eggの千同さんでした。植物のお店をやりたいんですと伝えたとき、とっても明るい声で『大丈夫ですよ、力になります、お任せください!』と言ってくれたんです。あのときのあの言葉が違っていて、少しでもためらいを感じさせるものだったら、私、相談に行くのも、起業するのも諦めてたと思うんです。そのくらい、あのときの言葉は心強かったですね」と栗田さんは当時を思い出して語る。

最初の相談は4月に入ってから。このときのアドバイザーは、経営コーディネーターであり6次産業化プロデューサーであり中小企業診断士である、安川典克さんだった。
「安川さんの引き出しの多さにびっくりしました。私がまず“植物を販売するお店をやりたい”とだけ伝えたら、温室は必要? 照明はどうするの? と次々に必要だと思うものを提案してくださって。びっくりしました」
2回目の相談日には、小出宗昭センター長が担当。
「小出さんからは『インパクトあるキャッチフレーズを考えたほうがいい』とアドバイスをもらいました。小出さんとお話したあたりから、もう後には引けない、好きじゃない仕事をするのは嫌だし前へ進むしかないと覚悟を決めました」

育児休暇が終わる2015年5月末に退職することを決め、第二子の1歳の誕生日である5月某日に開業届を提出した。
そして、オープンの日を6月22日に決めた。

見たことのないような植物がズラリ。もちろん育て方もていねいに教えてくれる
見たことのないような植物がズラリ。もちろん育て方もていねいに教えてくれる

お店をやると決めたものの、肝心な商材=植物をどこからどう仕入れるかが決まっていなかった。
仕入先を探し始めたのは2015年5月初旬のこと。まず自分の好きな植物を育てている生産者に直接電話して「仕入れたい」と伝えると、市場に卸しているから市場で聞いてみて、と告げられた。
「早速市場へ出かけて行って、市場の中と、実際に競りをしているところを見学させてもらいました。お店をやりたいので仕入れをしたいと担当の方に話したら、3年間この仕事に就いてないと競りには参加できないと言われ……そのキャリアが私にはないから一瞬諦めかけました。でも私、絶対にお店をやると決めていたので『どうしたら仕入れることができますか?』と食い下がったんです。そしたらようやく『仲卸を通せばいい』と教えてくれました」

このとき、市場の担当者に仲卸の業者を紹介してもらうことができ、無事に仕入れ先が決まった。ところがその方が扱う植物は生花がメインで、栗田さんが求めるような植物はほとんど扱ったことがなかった。だから最初は、植物の名前を挙げて注文してもなかなかわかってもらえなかった。
「私が植物を仕入れられる先はそこしかない。だから写真を見せたり、植物の名前をリストにして渡したり、理解してもらえるよう努力しました。そうしたら相手も勉強してくださったようで、スムーズにやりとりできるようになっていきました」
現在は、仲卸からの買い付けのほか、生産者から直接仕入れたり、栗田さん自身が直接東京へ出向いて買い付けてくるなど、さまざまな買い付けにチャレンジしている。

キャンドル作家にオーダーしたオリジナルの鉢も
キャンドル作家にオーダーしたオリジナルの鉢も

情報の発信は、Facebook、インスタグラム、ブログを活用している。
「スマホ自体は使っていましたが、自分の情報を出すのがイヤで、個人ではFacebookもインスタグラムもブログもやってなかったんです。でも仕事となれば話は別(笑)」
f-Bizのアドバイザーでありマーケティングディレクターである中野美保子さんのアドバイスを受け、まずはお店の存在を地域に広めるため、伊豆・箱根・富士を中心としたブログサイト「イーラ・パーク」にブログを開設した。

「開設したときから、1日1回必ず更新すると決めて、ずっと続けています」
中野さんからは「栗田さんらしさを出したほうがいい!」とアドバイスされていたけれど、最初はちょっと気取って書いていたこともあった。でも、毎日書くとなるとそれじゃ続かない。日常のたわいのないことや、その日思ったことなど、等身大の内容に変化していった。力まず素直に書くだけで毎日の更新が苦ではなくなり、楽しみながら続けていくうちにブログのランキングも上がっていった。
試しに「富士市 サボテン」「富士市 多肉植物」で検索してみてほしい。
トップに出てくるのは「Chestnuts」のブログである。これは、日々の更新のなかで必ず行っている“タグ付け”の効果。
このおかげで、扱っている植物を目当てに来店するお客さんも後を絶たない。ときには、県外からお目当の植物を買いにくる方もいるそうだ。

起業してもうすぐ1年が経とうとしている今も、月に1度は必ず、f-Bizに予約を入れて相談に行くそうだ。
「今自分がお店のことについて、悩んだり、考えていることをきちんと理解しながら聞いてくれる存在はf-Bizだけ。皆さんと話していると安心するので、出かけています」

自らペイントした鉢に多肉植物を入れたものもある
自らペイントした鉢に多肉植物を入れたものもある

その甲斐あってか、女性客はもちろん男性客も多く、リピート率も高いそうだ。“ちょっと変わった植物が好き”という共通点から生まれる会話が、日々の仕事のヒントになっている。
「お客さんと話しているときは、やっぱりすごく楽しいですよね。それに、夫も一緒に楽しんでくれていて、休みの日には店番をしてくれることもあるんです。子供達とも一緒に過ごす時間がたくさんあって、今、すごく幸せです」と話す栗田さんの表情は、とても晴れやかだ。

Chestnuts
http://chestnuts.i-ra.jp